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一言で言うと「どれくらい生産性が高いのか」を図る指標です。
計算方法も簡単なので覚えておきましょう。

飲食業界などを中心に「人時売上高」という考え方があります。
読み方は「にんじうりあげだか」。

多店舗展開しているケース(特にチェーン店)だとその立地条件によって売上が変わってきます。

その条件による差異に関わらず、店がきちんと利益を出せているかどうかを測る指標が「人時売上高」です。

人時売上高の意味と計算方法

基本的な知識をまずは知っておきましょう。

人時売上高とは?

人時売上高(にんじうりあげだか)とは「その店舗で一人の従業員当たり一時間でどれくらいの売上を上げているか・どれくらい生産性が高いのか」を示す指標のことです。
この指標は売上や人数の異なる店舗の中でどれくらい生産性が異なるのかを図ることが可能です。

人時売上高の計算式

人時売上高の計算式は次の通りです。

人時売上高 = 店舗の売上 ÷ 店舗の労働時間数

これを使用することで店舗の生産性を平等な指標で計ります。

例えば以下のような2つの店舗を比較してみましょう。

  • A店 売上100万/労働時間100時間
  • B店 売上30万/労働時間20時間

どう思いましたか?

売上高だけで見るとどう見てもA店の方が売り上げていますよね。

ただ「人時売上高」で見てみると別の姿が見えてきます。

  • A店 売上100万 ÷ 労働時間100時間 = 人時売上高1万円
  • B店 売上30万 ÷ 労働時間20時間 = 人時売上高1.5万円

見てみると売上高では負けていたB店の方が人時売上高が高い(≒生産性が高い)ということが見えてきます。

売上はどうしても立地などの条件が絡んできてしまうので人時売上高を使い、適切な運営ができているかを計算します。

※注意
立地だけではなく、店舗の形式(ロードサイド店舗で人を余分に配置しなくてはいけないなど)によってもこの数値は変わってきます。
必ずしもすべての店舗を平等に見ることのできる指標ではありません。あくまでその店舗で適正な数値を出せているかを確認するために使った方が安全です。

目先の人時売上高を追うことはサービス残業の原因にもなりうる

ここまでで書いたとおり、異なる条件の店舗をある程度一定の基準で図ることができるのが人時売上高の良い点です。

ところが悪い点もあります。

それが「飲食業でサービス残業ってあるの?」という話でも少し触れたサービス残業問題

特に飲食業では店長は管理職という扱いになっていることが多く残業を1時間しようとも、30時間しようとも基本的には給料が変わらないことが多く、中にはその仕組みを悪用して人時売上高を上げている人がいます。

例えば前述のB店。
店長が20時間の内、10時間入っていて、それを全てサービス残業扱い(時間数を付けない)にすると数値上、次のようになります。

(元)
B店 売上30万 ÷ 労働時間20時間 = 人時売上高1.5万円

(変更後)
B店 売上30万 ÷ 労働時間10時間 = 人時売上高3万円

どうでしょうか。

あっという間に(数値上の)生産性が2倍になります。

店長は残業をしようがしまいが給料が変わらないので時間数を付けずに仕事をする。

そして数値上の生産性は上がる…といった流れですね。

さすがにここまで露骨にやる人は少ないかと思いますが、数値を見る経営者側からするとここの店舗の店長は「数値管理ができる」という見え方になることがあります。

人時売上高の偽装はブラック企業の温床に

人時売上高を正しく使っているうちは問題ないのですが、このように目先だけの成績を上げるために数値を偽装すると労働の実態が見えなくなり、ブラック企業の温床となってしまいます。

前述のB店の例で言うと、店長がこういう数字のカラクリを使って運営し続けた結果「B店は人時売上高3万円が適正」と判断されます。

その場合、本当はその時間数で運用できないのにあたかも運用できるという見え方になってしまうところが問題です。

実際、すき家の事例では第三者機関による報告に「一人あたりの売上高を上げるために残業時間をつけない」というものがありました。

この数値ばかりにフォーカスが当てられて成果をこの数値だけで確認しようとするとちょっと危険というのは理解しやすいでしょう。

人時売上高の考え方がエスカレートしていくとこのような偽装問題〜サビス残業問題の負の連鎖になってくるので注意が必要です。