毎年、1月の成人の日と4月1日の新社会人・新入社員デビューの日に出る伊集院静さん、サントリーウイスキーの新聞広告。

2019年・新社会人向け版です。

ぜひとも今日の新聞を購入していちど読んでもらいたいです。

「新しい人よ。個性を失うな。」

新しい人よ。個性を失うな。

新社会人おめでとう。
今日、君はどこの街の、どんな職場にいるのだろう。
どんな仕事であれ、そこが君の社会人の出発点だ。
いきなり仕事はできそうかね? ハッハハ、そんな簡単
にできる仕事など、世の中にはひとつとしてないよ。
でも大丈夫だ。先輩たちは皆頑張っているだろう。
苦労をしたんですか? そりゃ辛苦のない仕事はないよ。
仕事にマスター法はない。でも一つアドバイスしてお
こう。先輩たちのやり方には理由がある。それも身に付
けなくてはイケナイが、これからの時代は従来のやり方
だけじゃダメなんだ。なぜかって?
今、世界は日々変化して、新しいやり方、新しいゆたかさ、
新しい喜びを求めているんだ。君は新しい人じゃないか。
どうすればいいかって?
君の、君だけにしかない個性がそれを実現させるんだ。
反対されてもかまわない。笑われたってイイ。社会は、
会社は、職場は、その新しい力を求めているんだ。
最後に、君の個性が、自分だけがイイという品性のない
卑しいものではないと信じている。出世や金だけが目的
の人間になるなよ。人は品格だ。それが人間らしさだ。
少し疲れたら、夕刻、一杯やろうじゃないか。
新しい君に乾杯。

新しい君に乾杯。
伊集院静

「ヤンチャでも、困った大人でもかまわない」

ヤンチャでも、困った大人でもかまわない。

成人おめでとう。
今日から大人?そんなことがあるわけがない。私もそうだった。正直、
大人なんかになりたくないと思った。
大人って何だ?それは人生とは何だ?と同じで答えなどはないんだ。
なぜ正解がないか?それは十人の大人たちは十の違った生き方で大人
になっているからだ。
面白いと思わないか?君が選択してどんな生き方をしてもいいんだぞ。
そう思わないって? なぜだよ。 大人って楽しそうでも、まぶしくも見
えないって。ハッハハハ。
それは違う!断じて違うんだ。君の目に見えないだけだ。
そこで提案だ。君だけはつまらない大人になるナ。
ヤンチャでも、困った大人と言われてもかまわない。
君の身体の中にある夢を、情熱で、君だけの大人を獲得するんだ。その
個性が活きれば、この国も、世の中ももっとまぶしくなるし、未来がひ
らけてくるんだ。
これだけは覚えておいてほしい。真の大人は自分だけのために生きない。
お金がすべてと決して思わない。品性を得ることは人生最高の宝物だ。
いいものだぞ、品性は。
夢をかなえるには苦しい時、辛い日があるぞ。
そんな時はどこかで一緒に一杯やろう。君に乾杯!

君の個性に乾杯。
伊集院静

伊集院静さんの広告は2000年から開始

私はもはや社会人となって大分経っているのですが、毎年この時期になると広告を見て頑張ろうという気持ちになります。
サントリーのこの広告、元々は作家の山口瞳さん、脚本家の倉本聰さん、現在の伊集院静さんと続いています。

伊集院静さんの広告は2000年からずっと続いていますが、伊集院静の「贈る言葉」として単行本にまとめられていますので興味がある方は読んでみてください。
※「伊集院静の「贈る言葉」」は2012年刊行なので、それ以前の広告が中心です。

また余談ですが、実は私、伊集院静さんの本は小説・エッセイ含め色々と読んだのですがお酒が好きな人であれば「二日酔い主義」シリーズがおすすめです。傑作集も出ていますが「あの子のカーネーション」から個別に読んでいった方が面白いと思います。