日経MJ2015年度・小売業調査で「必要な人員が充足できていない」というニュースがありました。
特にスーパーなどの業態が顕著な人材不足に陥っており、深刻な状況です。

他山の石にしたい。近年の小売業の反省点

小売業に限らず、飲食業でも同じような状況だったのですが、ここ数年の中で経営者側で利益のことばかりに目が行き過ぎていたのではないかと感じています。

例えば「24時間営業や営業時間の延長」「過剰な店舗拡大」などですね。

数年前まで「深夜でもスーパーが使える!」「出店数・全国◯◯店舗!」というようなことが小売業でも飲食業でも声高に叫ばれていました。
もちろん経営視点で言うと自分の事業を拡大するのがミッションなのでそれ自体が間違っているとは思いません。
ただ、そこにかかってくる「働き手」に対しての意識が欠如していたのではないかと思います。

先程の例で言うと「24時間営業や営業時間の延長」にしても「過剰な店舗拡大」にしても営業時間や営業店舗を増やせば増やすほど人材の確保は難しくなります。人が足りない時に、正社員が無理なスケジュールで働いたり、場合によってはパートさんも無理なスケジュールで働かされるような環境があったというのが現場の実情ではないでしょうか。

そこを直視せずに利益や数字だけを追い続けた結果「働きたくない会社・業種」と徐々に認知され、人材不足に陥っているのだと思います。
逆に言うと、やっと従業員のケアに目を向けられるようになってきたというのは良いこととも言えるかもしれませんが…。

ここは小売業だけではなく他の業種としても他山の石として目を向けたいところです

賃金が上がりやすくなり、従業員にとってはいいこと…?でもない

人材不足になると、なんとかして採用を進めようと「賃金アップ」の対応を取るところが多いです。
従業員側の視点で見ると基本給のアップはラッキーなように見えるかもしれませんが実は話はそう単純でもありません。

会社としては利益を出さなくてはいけないので、賃金がアップすると他のところで削減をしなくてはいけなくなります。
問題の一つとして発生しやすいのが「人件費を削減する」ことです。
具体例を挙げて考えてみましょう。

(従来)時給1,000円
10~12時までのシフト:2人で回す = 4,000円の人件費

(現在)時給1,200円(基本給を+200円アップ)
10~12時までのシフト:2人で回す = 4,800円の人件費

基本給をアップしたところ400円の人件費アップにつながっています。
そこで経営側としてどういう対応を取るかというと、次のようになります。

(現在)時給1,200円
10~10時30分のシフト:1人で回す = 600円の人件費
10時30分~12時までのシフト:2人で回す = 3,600円の人件費
合計4,200円の人件費

シフトを調整しながら人件費を抑えていくことになります。
従来のシフトにムダがあったのであれば、この手法でも問題ないのですが、従来からきつめのシフトで組んでいたような場合には時給が上がるものの、働き方がきつくなるというリスクもあります。

そして客商売なので

無理なスケジュールで働く 
→サービスが上手く回らず、お客様からのクレームが増える
→精神的に負担が大きくなって退職する

というような流れも出てくることもあり、労働者にとっても負担が大きくなったり、結局長く働けない職場環境になったり…という弊害が生じます。
実際に私が飲食業で働いていた頃も人手不足の地域ではそういう状況があったので、今小売業が直面している状況でも同じようなことが起こっていることもあるでしょう。

ロボットによる代替と小売店などのサービス業で働く人の付加価値

今後こうした人手不足を解消する一つのキーは「ロボットによる仕事の代替」ではないかと思っています。

「ロボットが接客をできるようになるのはまだまだ先の話では?」と思われる方もいるかもしれませんが、実はもうロボットが現場にどんどん進出してきています。

わかりやすいところで言うと「セルフレジ」がその一つ。

先日スーパーに買い物に行ったらセルフレジ8台に対して、一人のパートさんがサポート係に回っているという方法でお店が回っていました。従来の方法だと8台のレジを回すのは8人の人間が必要なので、そこから比較すると1/8の人件費削減になっています。おそらく小売や飮食などサービス業ではこういう仕組みが増えてくるでしょう。

もちろんサービス業で働く人がすべてロボットに乗っ取られるというわけではありません。
ロボットが「人間っぽさ」を演出するにはおそらくまだまだ何年もの時間が必要になるかと思われるので「人間にしかできないこと」を付加価値として持っていけばいいのかなと思います。

それは難しいことではなく「素敵な接客をする」、「お客様への案内の仕方、説明の仕方が上手い」など、身近なところから見ていくと理解しやすそうです。将来、ロボットが職場に導入された時に人間にしかできないことは何なのかを考えてみるともっと自分自身のスキルが上がるかもしれませんね。